師匠:四十歳を過ぎて陶芸を始め、女魯山人と称されるまでになった新進女流陶芸家・仲谷春子
弟子:陶芸を通して様々な事を学んで行く三十路嬢・三枝優子
この会話はフィクションであり、実在の人物とは何ら関わりはございません。
No.1 飯椀とは何ぞや?
弟子:お師匠さん、この黄瀬戸って言いましたっけこの柔らかな色合いが何とも言えない風情のある飯椀ですね。
師匠:そうねぇ。でも優子さん。
これは飯椀ではなく小鉢よ。
まぁ、少し大きめだから中鉢と言ってもいいかしら。
弟子:(´Д`ι)アセアセ
そうでしたか。飯椀じゃないんだ。
お師匠さん。
この小鉢はずいぶん織部の色味が明るいですね。
師匠:本当ね。でもこっちは小鉢じゃなく飯椀みたいよ。
弟子:(^ ^?) エッ? (゚∀゚;)アレ?
そうなんですか?
お師匠さん、いつも思うんですが、鉢と飯椀はどこが違うんですか?
師匠:(  ̄▽ ̄)ノ”
それはね、優子さん。
日本の食文化を考えれば分かるわ。
日本人はお碗を手に持って食べるけど、世界のほとんどの国では食器を持って食べる習慣はないと思うわ。
しかも、飯椀はお膳に伏せられて置かれているでしょ。
空の器が伏せられて出される国なんておそらく日本くらいでしょ。
日本人の食事は先ず始めに、飯椀を取り上げるところから始まるのよ。
弟子:(*-゛-) ウーン・・・
そう言われてみれば、確かにそうですね。
欧米でも立食パーティー以外では食器を持ちませんし、空の器があっても伏せられているわけじゃない。
師匠:しかも、飯椀は持つだけじゃなく、持ったり置いたりを繰り返すものだわ。
置いた器が再び取り易くもなければならないの。
この器の高台を見て。
弟子:(-""-;)(..*) ドレドレ
師匠:高台がハの字に内側に削られ、しかも、少し高いでしょ?
伏せられた器が取り易いように、そして、置いた器に指が入りやすいようになっているの。
食器は飾り物ではないから、使いやすくなければならない。
この使い易さを追求したのが「用の美」よ。
飯椀はこの条件を満たして初めて飯椀と呼ばれるのよ。
弟子:なるほど!
日本の食文化なればこそなんですね。
(゚∀゚;) アッ
でも、お師匠さん。
最近はハの字高台よりも真っ直ぐな高台が多いような気もしますけど。
師匠:そうなのよ。
昔は職人の手作りだったけど、今は鋳型成形の器だから型から外すことを考えると仕方のないことなのね。
弟子:(^-^*)(..*) ウンウン
工業化の波と採算に押されて日本の食文化も消え去ろうとしてますね。
φ(。。* ) メモシテオコウ