師匠:40歳を過ぎて陶芸を始め、女魯山人と称されるまでになった 新進女流陶芸家仲谷春子
弟子:陶芸を通して様々な事を学んで行く三十路嬢 三枝優子
この会話はフィクションであり、実在の人物とは何ら関わりはございません。
No.2 100円ショップ
弟子:お師匠さん、ここが噂の100円ショップですよ。
ここにある商品、ぜ~んぶ100円なんですよ。
凄いでしょ?
師匠:まぁ、本当?。
これが全部100円で作れるなんて驚きだわ。
弟子:お師匠さん、ほらほら、この大皿を見てくださいよ。
これなんか、中国製じゃなく日本製って書いてありますよ。
師匠:まぁー、本当!
これは確かに100円以上の価値がありそうね。
元々は、100円のために作られた物じゃないのかもよ。
弟子:いわゆる、ハネ物ってやつですかね。
お師匠さん、こっち、こっち。
ここの器もみ~んな100円ですよ。
こんなの見ると、手間暇掛けて手作りするのが馬鹿らしくなってきますね。
師匠:あらあら優子さん、そうは言っても100円は100円よ。
弟子:(^^?)) エッ?
何が違うんですか?
師匠:(〃^∇^)o_彡
それはね、優子さん。
ここにあるのは鋳型成形の器なのよ。
鋳型成形は石膏の型に粘土を入れて型抜きする方法よ。
教室ではやらないから知らなくても仕方ないけど、私たちが作る器は一つ一つを手作りで成形して、削りで形を整えてもいるでしょう?
技術も手間も格段に掛かっているのよ。
弟子:それはそうですけど・・・・・。
でも、同じ器なら安い方がいいじゃないですか。。
師匠:確かに同じなら安い方がいいわね。
でも、同じじゃないのも多いわよ。
持ち比べてみればすぐに分かるけど、重くない?
弟子:^(^^ )( ^^)^ ドレドレ
言われてみれば確かに重いですね。
だったら、全体をもっと薄く作ればいいんじゃないんですか?
師匠:全体を薄くすると、歪みが出やすくなるからそれだけ不良品が増えてしまうの。
それでは100円では売れなくなってしまうわ
それに、全体を薄くしても重心の位置は変わらないしね。
弟子:そうか。(^-^*)(..*) ウンウン
確かに色味はいいけれど、カップや茶碗など手に持つものは、これでは重い気がしますね。
師匠:さらにね、私たちが作る器は磁器ではなく陶器でしょう。
陶器は磁器より脆いから薄くしたら欠けやすいの。
だからといって、厚く作れば重くて使いにくいわ。
それを口縁部分は厚く残しつつボディーはやや薄目に、高台の内側などは薄く削ることで重心の位置を上方に持って行ってるのよ。
この100円の器と持ち比べてみれば、一目瞭然だわ。
弟子:なるほど!
だから、先生の器は見た目はどっしりとしているようでも、持ってみると軽く感じるんですね。
師匠:日常雑器は丈夫でなければならないし、手に持つ食器は軽くなければ使いづらい。
職人の器は、そんな普段使いの器として考えて作られているのよ。
弟子:そうだったんだ!
その手間や技術が100円との差なんですね。
私も違いが分かる女になりました。
師匠:そうそう、カップなど持ち手の付いている器は、持ち手を少し厚く作るだけでも軽く感じるものなのよ。
弟子:そうなんですか?
φ(。。* ) メモシテオコウ